17.ガラスの列車

<平成4年2月20日>

 お正月と思うまもなく、節分が過ぎて、梅の花が移ろい、桜が咲いて、時間という見えないガラスの列車は、容赦なく走っている。町を過ぎ野を過ぎ、山を越え海を渡って、幾つも幾つもの、人生の駅を通り過ぎながら。
 時には薔薇につつまれて、時には嵐にたたかれて、泣いて笑って、それぞれの人生の旅に向かって―。
 過日「人生いろいろ」というタイトルでおしゃべりをした。なんでこんなタイトルを選んで了ったのか、私自身分からないのだが。
 その対象は、七十名ほどの女性であったが、三十代後半から五十代後半までの、最高のキャリアウーマンであった。
 国会議員、弁護士、大学教授等々。その顔ぶれに圧倒されたが、私なりに長い歳月、戰争を通して時の流れに、紆余曲折しながら生きて来たこと、今考えていること、仕事のこと、これからの人生の集大成に向かって、燃えていること等々を話した。だれでも一生懸命に積重ねてきた経験が、自信となるのではないかと思う。
 慰め心もあるが、人それぞれ自分の人生に、誇りを持っているのではないだろうか。然し若い頃、もっと勉強すべきだったと思うのは、私だけではないと思う。近ごろはやりのトラバーユも時にはいい。いろんな世界を見ることも必要と思う。
 然し忍耐も必要であることを、今どきの若者に伝えたい。気がついた時、終着駅が目前というのでは遅すぎるのだ。時間というガラスの列車は、今も走り続けている。