0 はじめに ~ライオンの子守唄

 動物をテーマにあつかった音楽はいくつか考えられる。たとえば、管弦楽組曲の「動物の謝肉祭」(サン=サーンス作曲)や、かわいい小象の生活を描いたピアノ曲の「ババ-ル物語」(プーランク作曲)など……。
 ぼくも、いつか動物に関する曲を作曲してみたいというのが日頃から念願だった。そうしたチャンスを与えてくださったのが、詩人の小黒恵子さんである。というのは、小黒さんがアフリカのサバンナへ旅行されたとき、現地で完成されたさまざまな動物の幻想を14編の作品にまとめたものがこの曲を作る母胎になったのである。その詩は、いずれも動物に寄せる愛情が詩情に昇華されて強烈な個性で描写されている、いわばバラードであった。ぼくは、この14の詩を子どもの声によるハーモニーで構成しようと試み、わずか5・6日で全曲を作り終えた。この曲集は、その半分の7曲であり、あとの7曲もこれにつづいて出版される。ぼくは、1日も早く清純な子どものハーモニーでききたいと願っている。これらの曲は、女声三部でも活用できることはいうまでもないことです。
                           高木東六

 野生動物の宝庫といわれるケニヤに、取材旅行したのは、一昨年の盛夏でした。
 ナイロビ大学で、細菌学の研究をしている神戸獣医の案内で、ある日私の運転により、元上野動物園園長の林寿郎氏の撮影に同行しました。
 そのとき、肉食獣が草食獣を倒し、群がってむさぼる悽惨な光景を、目のあたり幾度も見ることができました。肉食獣と草食獣の関係は、自然界の摂理ですが、近年人間の不当な利益のために、動物の殺戮が半ば公然と行われている事実を耳にし慄然としました。幻の動物とならぬよう願う気持でいっぱいです。
 サバンナに生きる野生動物と、その周辺に生活する人たちへの限りない愛をこめて、この詩を作りました。
 感動的なすばらしい曲を賜った高木東六先生、出版を快諾してくださった淺香淳社長さん。
 そして編集の方々に心から感謝の言葉を捧げます。ほんとうにありがとうございました。
                            小黒恵子