Ⅲ-8 老獣の詩

ハッ!!とした 瞬間(しゅんかん)
すさまじい 響(ひび)きをあげて
ウオーターバックは 走っていた

砂煙(すなけむ)りを け散(ち)らし
ありったけの力を ふりしぼって
矢(や)のように
走る走る 走る走る
走る走る 走る走る 走る

目がくらんで
はりさけ破(やぶ)れそうな のど笛(ぶえ)

突然(とつぜん)
ウオーターバックは
なえた脚(あし)が もつれてきた
ズズズズズズ 
ドドドドドドドド

その時
ライオンの 鋭(するど)い爪(つめ)のナイフが
脇腹(わきばら)かすめて
ドドドーッ!!と 倒れた

舞い上がる 砂煙り
立つのぼる 土ぼこり
のど笛の
ヴァイオリンの 絶唱(ぜっしょう)が高鳴(たかな)る

見開いた 老獣の瞳(ひとみ)に
はてしない 
マリンブルーの空を
静(しず)かに 映(うつ)していた

【メモ】