1-10 パリのめぐり逢い ~花衣
その時--
あなたは
紺の背広に つつまれて
まずしい 美しさでした
瞳は 晴れた空のいろ
アルプスの 風の匂いを連れて
シャンゼリゼの カフェテラスの
真紅のテントを バックに
紺青の 矢車草のようでした
だから
一層 驚いてしまったのです
言葉が みつからなかったのです
一ぱいのコーヒーに
幾歳月の 時は消え失せて
パリの空の下で 語らうひと時
そして
黄昏の シャンゼリゼの人混みのなかに
さり気なく 別れました
--あのとき
もしあなたを送っていたら
僕の人生は 違っていたでしょう--
こんな言葉を かるく残して
パリの 思い出のなかに
まぶしく浮かぶ
矢車草
【メモ】