0 小黒恵子

 合唱組曲「白馬の海」が、熱海少年少女合唱団によって初演され、出版にいたるまで、大変不思議なたのしい経過がありました。
 先ずその発端となりましたのは、NHKの「みんなのうた」で放送された、小黒恵子作詞 小六禮次郎作曲による「モンキーパズル」のうたでした。
 アンデスのふもとの村で出逢った、大変珍奇なモンキーパズルの大木が、強く印象にのこり、メルヘン風のうたを作りました。
 その珍らしい木が日本にあることを、私は全く知りませんでした。ところが熱海の伊豆山に、その希少的な木があるのを知って驚いたのでした。
 そしてモンキーパズルの土地の所有者である牛島祐基氏が、思いもかけずそのモンキーパズルの木の下に、歌碑を建立して下さったのです。
 昭和59年11月、その除幕式典のときに、熱海少年少女合唱団が、「モンキーパズル」のうたを演奏して下さいました。
 それが縁となり、昭和61年9月の、合唱団創立20周年のための、合唱組曲のお話を戴きました。
幸い私は熱海に家がありますので、土地になじんで居ります。
 現実の熱海と歴史の中の熱海と、私の大好きな熱海とを重ね合せて作詞しました。
 1本の木、1曲のうたから出発して、全く未知であった熱海少年少女合唱団とその関係の方々に出逢い、こうして大きな拡がりの輪で結ばれた奇蹟的な幸せを、とても嬉しく思います。
 拡がりの輪の要(かなめ)となったモンキーパズルの牛島祐基氏ご夫妻に改めて感謝いたします。そして小林秀雄先生のすばらしい作曲が、私の詩にいきいきとした美しい生命を吹込んで下さいました。
 また合唱団の感激的な見事な演奏を指揮指導された松下隆二先生、そして「白馬の海」実現に、限りないお力を戴いた鈴木規雄先生と、熱海市の関係者の皆さま方に深く感謝致します。
 出版にあたり大変お世話になりました、音楽之友社の教育編集部の皆さま方、そして美しいすてきな装幀で飾って戴きました菊池信義氏に、心よりの感謝の花束を捧げます。