00 小林秀雄(作品メモ)

 熱海少年証書合唱団は、この20年間、創立以来の指揮者である松下隆二氏と、お世話役(代表者)の鈴木規雄氏を中心に、内田 滋・熱海市長はじめ地域の方々の、温く強い支持、支援を受け、その愛らしい、明るいひたむきな歌声をひびかせてきました。
 20周年記念として児童合唱組曲を制作する依頼を私が受けたとき、小黒恵子さんのすばらしい詩は、すでに何篇も完成しており、それらはいずれも情緒・情感、そして潑刺とした力感溢れるもので、その中の5篇をつぎつぎに作曲できた私は幸せでした。
 よく知っているつもりの熱海を改めて見なおす取材では、多くの方々のお世話になりましたが、とくに「熱海風土記」その他多数の著作で広く知られる郷土史家・山田兼次氏には、親交とともに実にさまざまな示唆を頂きました。
 また、わが国の児童合唱界の重鎮である指揮者・松下氏は、実は東京芸大時代私と同期生で、教育観、音楽観に強い共感を持ちうる畏友であり、すべての初演につきものの難事を鮮やかに捌き、絶妙に仕上げられた手腕には敬服のほかはありません。
 1986年9月28日、子どもたちは宮本玲子先生の、美しく確実なピアノに乗って、それはそれはみごとなハーモニーを、超満員の熱海市観光会館いっぱいにひびかせ、会場は拍手の渦で湧きました。
 コンサートの冒頭、心温まるスピーチをされた内田・熱海市長は、渡辺 衛・教育長(当時)共々最後まで席を立たず、20周年と新曲初演への祝意を示されました。地域の長(おさ)のこのようなマナーこそ、その地域の精神文化を高める上に、大きな影響を与えるのであります。
 これらすべての方々のお力を得て、私の作曲は完成し、音楽は世に出ました。心より深謝する次第です。また裏方の雑務すべてを遂行された鈴木代表と、出版に際し大変お世話になった音楽之友社の川上紀久子・市川徹氏にも、心からお礼申し上げたい。
                          1987年9月記

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・作曲:1986年3月~6月。
・初演:1986年9月28日、熱海市観光開館。
・演奏:合唱・熱海少年少女合唱団。指揮・松下隆二。ピアノ・宮本玲子。
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梅の花 約3分。前奏・間奏のピアノのメロディーはウグイスの鳴き声を模したもの。合唱はノドをよく開き、コトバを明瞭に。少々高く感じるならば長2度下げてもよい。おとなの女声合唱にも適す。
白馬の海 約3分30秒。69~110、133~145をたっぷりやると3分40秒くらいになるが、3分30秒で収めることも可能である。なお、69~110をたっぷりやる場合には、132(最後のAの音をカットして)から146へとべば、3分30秒以内に収めうる。速い部分では、一語一語敏速に発音すること。
淡雪の町 約5分15秒。おとなの女声合唱にも適す。少々短くするには、43までやってから75へとぶと、約1分短縮される。
熱海ざくら 音頭調の愛らしい曲。くり返して歌いたいときは、104のピアノを52の音に変え、前奏へ戻れば、1・2番をくり返すことができる。
海はともだち 約3分30秒。大らかに、勇壮に。