3-13 もう かえって来ないんだね ~おつむの チャック 

  ~今は亡き愛犬ロンに捧げるうた

霧だったね 九十九里の朝
露にぬれて はしゃいだのだれ
イソギクの水玉 なめていたね
おいしかったんだね

青かったね 九十九里の空
波に向かって 吠えたのはだれ
マントヒヒみたいな かっこうだったね
うれしかったんだね

続いてたね 九十九里の浜
まるい海棉 ひろったのだれ
いつまでもくわえて 歩いてたね
とくいだったんだね

しめってたね 九十九里の砂
チビの磯ガニ みつけたのだれ
おさえてはとびはね 吠えていたね
こわかったんだね

光ってたね 九十九里の海
しずむ夕日を みてたのはだれ
まばたきもしないで すわってたね
みとれてたんだね

もうかえって来ないんだね

もう かえって来ないんだね
絵:腰高 多恵

【朗読】
  もう かえって来ないんだね
    朗読:大森 寿枝
     絵 :腰高 多恵

【メモ】
小黒恵子が「詩人」を目指すきっかけになった詩。師事していたサトウハチロー氏に初めて褒められた詩、と自身が語っている。